2022.02.04コラム
ワインサイドストーリーVol.02 ~アタウタ編~
蘇る古木と二人の若者~アタウタ
リベラデルドゥエロというスペインワインの銘醸地の東端、標高1,000mの人里離れた村に樹齢100年級の古木のぶどう畑が根を張るようにたたずんでいるアタウタ。
牧歌的で童話に出てきそうなのどかな村、ここで代々ぶどうを造っていたのかとプリオラートと同じく世界ふしぎ発見の舞台になりそうな場所がまたひとつ。
ワイナリー前を横切る羊の群れ 牧歌的な風景が広がっている。
その村出身でアタウタの畑を栽培管理しているイスマエル、「あれは何歳くらいですか?」と聞くと「130年くらいかな」と言いながらぶどうの幹の部分に枯れ葉などの異物を見つければ手ではらって除去し、まるで盆栽を扱っているような眼差しと手つきで説明してくれる。
驚いたのは樹齢160年の死にかけていた古木がイスマエルの手によって蘇り5年かけて見事に復活、芽がでてついにぶどうの実をつけた。
私のような素人目には生きているのか死んでいるのかわからないが、彼からすると「まだ生きてるよ」と。まるで診察するかのような医者の目で丁寧に手入れしている。
栽培管理担当・イスマエルさん(写真左)
そんな彼とタッグを組んでいるのが醸造家のハイメ。着任時は38歳と若くエネルギッシュ。
ワインメーカーの父親のもとで育ち、大学で醸造学を専攻、海外で経験を積み、スペインに戻ってからトロのガレージワイナリーでワインを造っていた。「アタウタのことは前から知っていたのでここでワインを造れるなんて夢が叶ったよ。フィネス、エレガントさにおいて間違いなくドゥエロの5大トップワイナリーのひとつと思う。今後もエレガントさを極めてもっといいワインを造っていきたい」と意欲的に語る。
そんなアタウタといえばランチはぶどう畑を見ながら屋外でバーベキュー。地元の名物ラム肉をぶどうの木の枝で火をおこして焼き、アタウタのワインでぐいっと流し込む現地ならではの贅沢。
ぶどう畑を見ながら屋外バーベキュー
ハイメはお茶目でユーモアのあるキャラクターに対して、イスマエルは地元なまりの超絶早いスペイン語(私には(笑))で常に真面目。好対照な二人のコンビが実に頼もしく微笑ましい。
ワインの樽試飲はいつも二人でチェックしているそう。イスマエルはこの管理の難しいとされるアタウタを任され、その実力が認められたためアタウタだけでなくグループの他の産地の畑も監督しているので最近は忙しそうだ。一方で、ハイメは「この宝のような畑のアタウタで醸造家の自分の役割は畑9割としたら1割。」と謙虚な姿勢を見せる。
かっこいいなあ、アタウタの土地をよく知っているプロの心意気。
醸造家ハイメさん(写真左)/栽培管理担当イスマエルさん(写真右)
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